「指圧」とは?

法で定められた「指圧の定義」

  

 指圧法とは、徒手で拇指、手掌等を用い体表の一定部位を押圧して生体の変調を矯正し、健康の維持増進をはかり、または特定の疾病治癒に寄与する施術である。(定義)

 

指圧法は、何等の器具機械を用いず、徒手で行う。患者の被刺激性、興奮性を応用して、適切な圧刺激を加え、効果的な生体反応を期待するのである。この押圧は、矯正と反射の二つの目的をもつて行われる。矯正とは身体の形態を正常にすることを目的とする技術であり、反射とは身体の機能を調性することを目的とする技術でいう。この矯正、反射の技術を活用して全身機能の好転をはかるのである。

 

われわれが健康であるためには、臓器、組織の機能がよく整調されていることが最も必要である。そのためには臓器、組織は正しい位置、正しい形態を保たねばならない。その意味で骨格の正常化が考えられる。また生命保持に最も必要な、心臓、肺臓、胃、腸、肝臓、膵臓、腎臓等は、胸、腹腔内にある。これら内蔵の位置、形態を正常化するためには脊柱の矯正が必要である。正しい脊柱では、その椎間孔の位置、形態も正しく、椎骨に歪(くるい、ひずみ、ゆがみ)のないかぎりは椎間孔から出る脊髄神経も、何等の圧迫も受けない。また脊髄神経根と交通する自律神経とも連関も円滑で、腹腔内蔵の機能も正しく営まれる。もし椎骨に歪みがあると、これらのはたらきに障害が起る。

 

指圧法でいう矯正技術は、脊椎骨の病変や、器質的障害によつて脊椎変形を起した場合を除く脊椎弯曲、異常――しばしば業務による強制姿勢により、主として背腰筋の緊張が左右不平均(アンバランス)をきたしたときに現れる。――が適応症として、その対象となる。

 

このような場合にその筋肉群の緊張不平均を指圧で整調し、歪める脊柱の弯曲を指圧を主とする操法で矯正するのである。

 

また筋肉群の緊張や、硬結が左右同一でない時は、そのために脊柱の弯曲が起る。このような場合には筋緊張にたいし、指圧矯正して緊張を解くことに努め、歪められた脊柱の矯正を行う。同時に押圧(圧刺激)による反射機転を介して全身機能の均衛を正常化するのである。 

 

  昭和32年12月 厚生省医務局医事課発行『指圧の理論と実技』より

 

 

○現代ではネット上に無い情報は世間的にも無いものとされる為に、基本の原文を冒頭に記しておこうと思います。


指圧の定義

「指圧はあん摩、導引、(柔術の)活法、を総合した経験療法として、江戸時代には民間で行われて来たが、明治時代に入り、これらの手技操作を共通するアメリカの整体術、カイロプラクティック、オステオパシー、スポンディロセラピーなどの療術が輸入されるにおよび、この施術を導引に取り入れ、改良して独自の手技療法として体系化し、大正時代に指圧法として統合され、昭和30年8月にあん摩(マッサージ、指圧を含む)として法律で認められ、次いで昭和39年6月に名称が改正され、あん摩、マッサージ、指圧師として現在に至っている。

 

指圧の名称

「指圧」の名称に関して、玉井天碧先生、川崎快泉先生の両氏による「どちらが先に指圧の名称を興したか」裁判があり、結果、玉井天碧先生が「指圧の名称元祖」とされました。


指圧を現代版へアップデート

定義でも分かるように、「指圧」が国に認められ、法制化された背景は、盲人の為の職業、慰安を目的とした「あん摩・マッサージ」とは一線を画する「治療を目的とした(当時)最新の手技療法の統合」を目的に名称も「指圧」と統一し、「さぁここから治療術を磨き上げていきましょう」とされたものである事が分かります。

 

しかし冒頭の定義全文を我々指圧師が読んで分かる通り、指圧本来の意味を我々指圧師が法制化後、早々に捨て、「骨抜き」な定義になってしまった事があらわになります。

 

今日、「指圧」が死語同然になってしまった根本的な原因がこの骨抜きになった定義にあります。この形骸を打破、改善するにはあまりに「指圧」は弱くなってしまいました。しかし弱まったまま朽ちていく日本独自の和術「指圧」。このまま朽ち果てさせては指圧法定義を作成、法制化に尽力された日本指圧師会の始祖治療師の先生方に申し訳が立ちません。

 

バージョンを上げる、アップデートするにはどうしたら良いか?その一歩としてコロナ禍の今、この日指会のサイトをVer.、1つ上げていきます。


指圧が抱える

問題点とは?

 

ひとまずざっと挙げてみましょう。

 

 

○指圧の意味と、一般の認知の大きな差異。

 

 

○医業なのか?医業類似行為なのか?そもそも医業類似行為とか何なのか?

🌝医業類似行為について更に考える

 

 

○定義や基本技術、理論が60年以上、改定、バージョンアップをほぼ行っていない。それに伴う養成学校での技術レベル低下。

 

 

○60年以上、医学的エビデンスが脆弱。

 

 

○指圧の法制化の差異に危惧されていた「あん摩・マッサージ・指圧」の無理矢理統合した弊害。

 

 

○ますます広がる厚労省管轄外の「国が認める手技」(例:経産省認可のリラク)

 

 

○あマ指有資格者の知識、技術の大きな差。

 

 

○近年では国家資格を得るメリットが、介護保険料請求できる訪問マッサージ程度。

 

 

○何より指圧法制化前よりの「業者同士の団結力」が皆無。

 

 


―責任編集―

 

高木剛太

 

(日本指圧師会は結成以前より、理論、流派問わず治療を目的とした指圧法を研鑽する為の任意団体であるので、出来る限りの中立的、公正的な編集を心がけています)

 

 

〈更新履歴〉

2022年5月、指圧とは?加筆修正